友人が、乳がんに罹り闘病中です。乳房をそのまま残したいと、乳房温存手術を行ったと言っていましたが、再発などの危険性はないのでしょうか?
乳房温存手術の再発に関する危険性は乳房切除術の再発率と変わりありません。乳がんの手術は19世紀末、胸の筋肉を一緒にとり乳房を全部切除する乳房切除術にはじまり、その後筋肉は残すが乳房は全部切除する手術へと縮小されました。
1981年イタリアで乳房温存術に術後の乳房への放射線照射を加えた人たちと乳房切除術をした人たちの比較がされ、乳がんの治りやすさ(生存率)に差がないことが証明、さらにアメリカでも乳房部分切除、部分切除+照射、乳房切除の治療方法で病気の治りやすさに差がないことが証明、その他数々の比較試験で乳房温存手術は乳房切除術と治りやすさに差がないことが証明されました。
1991年アメリカでは大部分の病期I、IIの乳がんに対して乳房温存術が標準治療として推奨されることになりました。
日本では、これらの比較試験の結果をうけて1999年日本乳癌学会から乳房温存術のガイドラインが出されました。乳房温存療法が適応されるのは、
1:腫瘍の直径が3cm以下
2:広範な乳管内進展がない(病気があまり広がっていない)
3:多発病巣がない(病巣が一つだけである)
4:放射線照射が可能
5:患者が希望する
ことを条件としています。ただし、温存した乳房への再発がありますので、がんを残さないように切除する、温存乳房へ放射線療法をおこなうことが標準的治療とされています。適応条件に合わない方も、場合により術前に治療して腫瘍を小さくすることにより、温存療法が可能になることもあります。専門医と相談し、適切な治療をうけることが必要です。